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ストーリー12.対話を使った組織変革・人材育成

(音楽)

中原 皆さんこんにちは。東大の中原淳です。
それでは、きょうは、ちょっといつもよりは毛色を変えまして、大学教育から離れてみたいと思うんです。企業とか、社会教育施設、生涯教育施設、いろんな大人の学びの空間がありますけれども、そうした所での教育とか学習といった問題を、きょうは扱っていきたいと思います。
お忙しいところ、本当に無理を申し上げまして、加藤さんに来ていただきました。ありがとうございます。

加藤 よろしくお願いします。ありがとうございます。

中原 加藤さんは、今、どんなお仕事をなさってるんですか?

加藤 僕は主に企業の中で、ワークショップというのをやるわけですけども、企業の中でいろんな同じような立場、例えば課長さんなら課長さんを集めて、部長さんなら部長さんを集めて、ワークショップという形で学んだことをどう自分のものにしていくか、自分ごとにしていくような、そんなワークショップを主にやらせてもらってます。

中原 そういう意味で言うと、企業の中の人材育成とか人材開発っていう領域になると思うんですけど。

加藤 そうです。そういう領域です。

中原 それって企業の中の教育っていうと、一般的には上からドンとやるような、いわゆる一斉授業の形になるんですか?

加藤 当然企業の中にはルールみたいなのもあるので、コンプライアンスと言われる法令順守みたいなのは、そういった上から落とす、ダウンロードするというものもあるんだけれども。

中原 ダウンロード?

加藤 ダウンロードするようなのも、当然あるんですけど、やっぱり最近の大きな流れは、日ごろ集まれない人が同じ立場で集まって話をする。それで学んだことを、何かアウトプットにしてくというトレーニング、僕らはアクションラーニングと言いますけども、そういったものが多いのかなという気がします。

中原 なんかグループになって、いろいろ話し合って、で、アウトプットということは、これ実践するということですか?

加藤 そうです。実際に自分で学んだことをやってみて、やってどうだったか、また持ち寄って、それでまた、発展、もう1回話す。企業で言うPDCA、プラン、ドゥ、シー、アクション、これの繰り返しをやるということが多いかなと。

中原 そういう意味で言うと、やったことの実践、アクションとラーニングがくっ付くから、アクションラーニングということですね。

加藤 そうです。アクションラーニングという言葉を使います。

中原 なるほど。そうしますと、チームでいろいろ議論をしたり、対話をしたり、要するにコミュニケーションをするようなことが多くなると思うんですけれども、そういうときに、加藤さん何をなさってるんですか?

加藤 そうですね。僕の役割はファシリテーターという役割、ないしはグループコーチという役割になるんですけど、まず頭の中をみんなで話し合って整理するというのが一つあると思うんです。頭の中を整理する。で、整理するだけじゃなくて、人間やっぱり、特に組織の中に居ると理不尽なことっていっぱいあるので、その気持ちの整理もするっていう、その二つがまず大きな要素になるかなと思います。

中原 整理をするってことは、逆に言うと、いろんな人たちが集まってグループで話し合うと、とっちらかっちゃったりするってことですか?

加藤 それもあります。当然。広げてみる。で、その中で他の人はこう感じてる。じゃあ、自分はどうだって、自分のことを客観視できるというか、そういうようなことになります。

中原 じゃあ、そういう整理役みたいなのを担ってる。

加藤 そうです。

中原 あと、他にはファシリテーターとかファシリテーションという役割には、どんなものがあるんですか?

加藤 一番大きいのは、場づくりだと思うんです。ここは、どういうことを話していい場所なのか。どこまで話すのか。特に、企業の場合タブーがいっぱいあるので、どこまで踏み込んで話していいのかみたいな、その場の設定と、あとどういうことを話しするのかというのが、多分一番、まず大事なところなのかなと思います。

中原 対話をするんでも、ある意味ルールっぽいことをきちっと言って設定すると。

加藤 そうです。

中原 あとは、どこまで話していいよっていうのは、ある意味規範の設定ってことになるんですかね。

加藤 そうです。トーンアンドマナーというか、どういうトーンで、どういうマナーでやるかっていう、そんな感じになるんです。

中原 なるほど。でも、そういうのって、一言で言いますけど、盛り上がるんですか?

加藤 いや、これが、最初からうまく離陸できる、ちゃんとテークオフできるところもあれば、場によってはドン引きっていうんですか、みんな引いちゃう場合も当然あるので、いかに最初、みんなが、ちょっと話してみようかなっていう場づくりをしていくかっていうのが、僕らプロの勝負の。最初の、だから1時間がもう決定的に大事になると思うんです。

中原 じゃあ3日間あったら、一番緊張なさるんですか?

加藤 もう最初の1時間は、これ年に僕、200日ぐらいやってますけど、本当毎回ちょっとビビリます。本当、吐きそうになるときあります。

中原 根本、多分なんですけど、自発意思で企業の中の学習とか育成って来るわけじゃないわけじゃないですか。

加藤 そうなんです。別に学びたくて来てるわけでもないわけです。

中原 そうすると、やっぱり、このくそ忙しいのに、こら、みたいな。

加藤 そう。みんな忙しいんだよって、さもメールも途中でやる人、内職するつもりで来てる人も居ますし。

中原 スマホとかでね。

加藤 ね。

中原 あと、こんなのも居るんじゃないですか?

加藤 当然もう腕組みして、やってごらんって。いやいや、どっちが先生なんだよみたいな場合も、当然ありますんで。そういう人をいかに、お、これちょっと面白いかなとか、ちょっとやってみようかなと、いかにそこにもっと早くもっていけるかっていう。そこは自分の全経験をかけて、勝負しなきゃいけないところになります。最初の1時間は。

中原 ある意味で「大学教育からきょう離れる」って言ったけど、大学教育も似たところもあって、東京大学だとこういう学生も居るし、この教員どないなもんじゃみたいなやつが。

加藤 見てやろうみたいな。

中原 見てやろうみたいなやつも居ますし。本当にやる気失ってて、ホニャーンとして寝ちゃってるやつも居るので。そういう意味で言うと、おかしい話ですけど、必ずしも学びたくて来てるっていうのが、ちょっと疑問符ってのはあります。

加藤 大学と言えども。

中原 そうです。だから、そういう人にいかに学問とかそういう探求、研究というものに、ちょっとでも近づいてもらうかっていうのは、すごい課題な気がしますけど。

加藤 面白さに気付かせるというか、触れさせるみたいな感じなんでしょうね。

中原 そうです。なんらそこから先の物が奥深くても、来ないことには話にならないというところも。

加藤 入り口に立たないとね。

中原 ええ。特に企業の場合だと、そういうことあるかもしれませよね。

加藤 そうです。みんな忙しい中で、細分化された中で、高速回転で仕事してるのに、急にボンと日常から引き離されて研修だって言われると、ある種どのリズムでやっていいか、戸惑うんだと思うんです。

中原 じゃあ、最初冒頭部は、そういう戸惑いとかって感じられますか?

加藤 きょうは何させられるんだっていう。きょうは何する場なんだっていう困惑みたいなのが多いです。特に偉い人になればなるほど。

中原 じゃあ研修室入ってこられて、最初からハテナみたいな感じなんですか?

加藤 やってごらん、みたいな。例えば役員とかになってこれば、多分そうですよね。部長さんや役員、上の人になってくれば、なるほど。

中原 それはエグイです。

加藤 そうです。

中原 対話とか議論とかなさってる中で、今みたいな、最初始まっていくときには、ハテナな人も居るでしょうけど、例えば発言を促しても、うんともすんとも言わないやつとか、いろいろ居るんじゃないですかね。

加藤 居ます。だから、そういう人、無理に当ててもしょうがないんだけど、多分その人が考えているであろうことを、代わりに僕がちょっと言語化するっていうのは、結構大事かなと思ってます。

中原 どんなふうにやってるんですか?

加藤 例えば、きょうこんなに忙しい中に、何のために居るのかって、つい思っちゃいますよねって、こう、思わずこん中で吹き出しが出てるようなの、代わり言語化してあげると、みんなニヤっとしますよね。

中原 そうなんだ。分かってるじゃん。

加藤 分かってんじゃん、お前、みたいな。ああ、そういうの一応分かってるんだなってなると、ちょっと留飲が下がるというか、ガードが下がって、ちょっと前向きになってくれるかなという気がします。

中原 そういう意味で言うと、あれなんですかね、受講者の立場になってみるっていうか。

加藤 想像力はすごい大事で。

中原 その声をこう、腹話してるのか。

加藤 場の声をちょっと増幅するというか。

中原 そこには、コツはあるんですか?

加藤 やっぱりタブーみたいなのに踏み込むのは、僕は結構得意で、その会社どんな組織もタブーというか言っちゃいけないことってやっぱりありますよね。例えばおたくの商品ってダサいって言われてますよね。それってどうなんですか?みたいな。で、みんながゲみたいな。そういうこと言うの?みたいな。そこに反応があれば、いい反応でもネガティブな反応でも場は進行するんで。反応がないのが一番困りますよね。僕らの仕事は。

中原 そうですね。つまり無関心という状態が一番きつい。

加藤 無関心が一番困ります。反発でも興味でも、どっちでもそこはニュートラルで。

中原 レスポンスさえあれば。

加藤 あればなんとなるというふうに、信じてやってます。

中原 なるほど。予想なんですけど、議論がバって発散しちゃって、何が問題なんだっけ、分かんねえよみたいな状態というか、着地とかゴールが見えないような状況はないんですか?

加藤 収集付かなくなるとき、当然あります。特に発散系でやる場合は、いろんな話が出てくるのはいいんだけど、で、どうするのよ?みたいな。そこにハテナマークが出るときがあります。

中原 そういうときはどうするんですか?

加藤 そういうときって、僕が何か見えてるときは「皆さん本当はこうしたいんじゃないですか?」ってスパンと言えるときもあるんです。感度がいいときは。感度が悪いときは、僕なんか、今言われて考えると、相談します。「皆さんどうしたいですか?」って言う。そうすると、それなりにみんな経験がある年齢を、社会人になった人だから、こうしていきましょうよとか、こっちが一方的にいいこと言わなきゃいけないっていう呪縛から離れると、意外と面白い声が参加者の中から出てくるような気がします。

中原 つまり自分たちでこれからやることを、自分たちで決めるということですね。

加藤 決めさせたいんです。僕はやっぱり。

中原 それはなぜですか?

加藤 多分、僕が当事者でないからです。あくまでも外部の人間でファシリテーター、支援者として居て、やるのはやっぱり彼らなので、彼らの手に戻したいんですかね。

中原 確かに、でもそれは、自分たちでこれからやることを自分たちで決めるってことは、自分たちのこれからやることにオーナーシップを持つということじゃないですか?

加藤 正しくそうなんです。だからいかに、僕のプログラムはオーナーシップみたいな言い方をするんですが、やっぱり自分ごとにしていくっていうプロセスが、本当大事だと思うので。そこで僕が待てるかどうかです。ついこっちに誘導したくなるときも当然あるので。

中原 ありますか?

加藤 やっぱり、こうしたらいいじゃんっていう。それだったら、コンサルタントになっちゃうんです。僕らコンサルタントじゃなくて、ファシリテーターであり、コーチなので。

中原 でもそういうときって、例えば、加藤さんこっちのほう行ってほしいんちゃうのって見えませんか?

加藤 そう。で、そう読まれ始めるじゃないですか。だから、僕がそう言われたら「読んでるでしょう。皆さん」みたいに言い返して。それも言語化して、チャラにして、もう1回そこから立て直して、リスタートするみたいなのは、すごくやります。ある意味意図を読まれないように。みんな賢いんで。ある程度組織の中で熟練者ですから、オチを見つけたらそこに向かって、予定調和的に最後集まってくるんで。そこはなるべく蹴散らしたいです。

中原 なるほど。オチと正解を見られてるんです。

加藤 そう。僕はたまに「僕の研修はオチのない研修だから、どこに行きたいか皆さん次第」みたいなことを言うんです。

中原 「お前、オチないのかよ」ってないですか?

加藤 「オチないのかよ」「そう、あなたがオチです」みたいな。

中原 ちょっと質問をずらすと、例えばそういう対話とか議論とかそういうコミュニケーションとかインタラクション、相互作用をハンドリングしていくというかファシリテーションしていくって、結構高度な技術というのか。

加藤 怖いものはあります。

中原 インプロに近いものがあります。

加藤 そうです。即興力に近いものがあります。場から作るって。

中原 それはどうやったら、逆にこれ見てる方、多分興味深いと思うので、どうやったらうまくなるのかなとか、どうですか? それは。

加藤 それはもう先生なんかもよく言われてるけど、場数は当然あると思うんです。場を読んでいくってのもあると思うんですけど、僕は自分の身体感覚としては、やっぱり合気道がすごく参考になっていて。

中原 そう。

加藤 相手の力を使って投げるみたいなのを、やっぱり自分は身体感覚で持ってるので、できるだけ場から作っていくっていう。相手の人のネタを使って、素材を使って展開していく方向になるべく持っていきたいなっていう。

中原 僕も合気道やってるんです。

加藤 先生も始めたんですか。

中原 2年前から。

加藤 もう2年たちます。じゃあ、そろそろ段じゃないですか。

中原 いえ、まだまだ。ちょっと、くそ忙しくてなかなか行けなくて、今、青だったかな。

加藤 そうですか。

中原 ようやく青になったんだけど。でも分かります。その感覚は。着てる物を使って自分の力にするっていうか。

加藤 相手と一体化して展開してくっていうのですかね。自分と相手の区別をなくすみたいなところです。それが相手の力を使って、結果的に投げるっていうことになるので。だから、場をいかに自分が想像でもいいし、一体化して、場の一部として、自分が使えるようになると、動かせるかな。コントロールを手放せるようになるような気がするんです。

中原 ちなみに、どのぐらいやってるんですか?

加藤 合気道?

中原 うん。

加藤 これは38歳から始めたんだけど、12年。

中原 すごい。そうか。だから、僕も38歳から始めたから。

加藤 偶然です。

中原 同じぐらいからです。

加藤 まだ道は長いです。

中原 長いよね。分かりました。
 他にはなんかありますか? 対話っていうのを。

加藤 僕自身がちょっとせっかちなところもあるんですけど、つい参加者の人が考えてること追い越しちゃうんです。先のこと言っちゃうとか。「こうでしょ」とやっぱり言いたくなるんです。ある意味答えを言いたくなるんです。だけど、できれば、それをなるべく言わないで、待つというか。参加者の人たちが自分で起き上がってくるというか、立ち上がってくるところまで待てるかっていうのが、本当、僕にはすごく筋トレが必要だった分野だと思います。

中原 確かにどう関わったらいいかは、普通みんな気にするけど、関わるためには受けなきゃならないし、もっと言うと聞かなきゃならないし、そういう意味で言うと非常に積極的に関わるために受動的な関わり方を必要とするというんで。

加藤 そういうことです。その矛盾みたいなものを引き受けるというんですかね。

中原 ものがあります。

加藤 追い越さないというのが、とても大事だと思います。

中原 参加者を追い越す。よくある気はします。僕も多分すごく苦手で、非常に前のめりなので。

加藤 舞い上がってっちゃう。

中原 舞い上がっちゃって。

加藤 一生懸命になればなるほど。

中原 先に行き過ぎだよ、みたいなのがあります。分かりました。
 最後に、これは企業とか社会教育施設とかで教えることや、そういう人を伸ばすというか、ことに携わってる方も結構見られるんですけれども、なんかそういう方に一言アドバイスっていうか、加藤さんの中で、長年の経験でこれはあったらいいなみたいに思うこととか、ありますか?

加藤 そう言われて、今ちょっと思い付くのは、ある意味人の可能性を信じるというか、ちょっと精神論になっちゃうんですけど。人の可能性を信じて関わるかどうかは、やっぱり全てににじみ出ちゃう気がするんです。これ、組織の可能性を信じるって話と一緒になりますけど、僕の仕事的には。20人ぐらい居たら、その中に必ず何か言う人が居るという角度で見てると、なんかその人が言うとかなんか起きてくるってことが多いかなという気がちょっとするんです。そのスタンス、立ち位置、在り方っていうのが、やっぱりスキルも大事なんですけども、外せないところなのかなと思います。

中原 人がある意味伸びるっていうことを信じるってことは、そういう人間観を持つってことですよね?

加藤 そうです。まさしく人間観です。それが組織観や経営観にもなってくので、そういうのが社風みたいに出てくると思うんです。企業の場合は。

中原 それは出ます。

加藤 すごく出ると思う。最近やってても。人の育てる会社とそうじゃない会社って、露骨に最近違いになって出てると思います。

中原 そうですね。分かりました。
 それじゃ、お忙しいところ、きょうはどうもありがとうございました。

加藤 ありがとうございました。

中原 ということで、終わります。

(音楽)

(了)

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