Utokyo faculty development東京大学

  1. 東京大学ファカルティ・ディベロップメント(東大FD) TOP
  2. インタラクティブ・ティーチング
  3. 動画で学ぶ
  4. ストーリーセッション:
  5. ストーリー11.研究の駆動力にもなる「おもろい教育」を目指して
インタラクティブ・ティーチング

ストーリー11.研究の駆動力にもなる「おもろい教育」を目指して

(音楽)

中原 はい、それでは皆さんこんにちは。中原です。またストーリーセッションのコーナーを始めていきたいと思います。
 今日は理学系研究科の入江先生にお越しをいただきました。入江先生、ありがとうございます。

入江 はい、よろしくお願いします。

中原 よろしくお願いします。まず早速先生のご研究のほうから伺いたいんですが、先生の専門は何て言ったらいいんでしょうね。
 理学系研究科ってちょっと、もうちょっとブレークダウンすると?

入江 理学の生物学。

中原 生物学ね。

入江 動物がどんなふうに進化するか。してきたか。

中原 なるほど。

入江 そういう形、人間ってなんでこんな形してるんかとか、そういうのを研究してます。

中原 そうなんですか。そういう動物の進化の過程になるんですか、そうすると。

入江 そうですね。進化の過程と、あと体がどういうふうに作られていくのか。

中原 なるほど。先生は今東大のほうで授業は何コマお持ちになってるんですか。

入江 コマ数でいくと何ぼぐらいになるんですかね。10超えるんですけど、一つの進化発生学とか、そういうのを

中原 分担してるのも入れればね、ってことですか。

入江 はい、そうですね。

中原 ご自身一人ではどのぐらいお持ちなんですか。

入江 1人では進化発生学と、あと科学英語とかも、そういうのも担当してて

中原 そうなんですか。へえ。ご自身の一番、研究に一番近い科目ってなると何になるんでしょう。

入江 進化発生学ですね。

中原 進化発生学ですか。それは大体何人ぐらいの方が参加なさってるんですか。

入江 12、19、今年19とかって聞きました。

中原 そうですか。

入江 はい。まだちょっと前半始まったばっかりなんですけど。

中原 なるほどね。それは理学系研究科の学部生?

入江 学部生です。

中原 3、4年生?

入江 3年生。

中原 3、4年生ですね。

入江 3年生です。

中原 3年生。

入江 はい。

中原 どんな授業なさってるんですか。

入江 授業はやっぱりここが分かってないですよ、っていうのが伝わるように心がけてますけど、
 やっぱり全部分かっちゃってること話しても面白くないじゃないですか。

中原 それは動物の進化とか発生に関する知識とかを、ありもののことをしゃべってもしょうがないってこと?

入江 しょうがない。なんか人間から何億年ぐらい時間かけたら仮面ライダーみたいになるんですかとか

中原 なるほど。

入江 そういう素朴なのも、答えれないですけどね。答えれないんですけど、でもそういうのに答えようとしたら何が必要かとか、そういう感じで。

中原 そうすると、今までいろいろ分かってることっていうのは、どういうふうに学ぶんですか。それは家で読んどけって話ですか。

入江 一応小テストみたいなのを毎回課して、「この範囲だけはちゃんと押さえてきといてな」と。

中原 家でねと。

入江 そう。「教科書、この部分だけは勉強しといてください」って言って、小テストとかをして、知識確認は一応するんですけど、
 それをできるだけまとめれるように、クエスチョンベースで小さな項目を授業内で組んでいくっていう感じですね。

中原 で、そのクエスチョンについてみんなで議論するって感じですか。

入江 そうです、そうです。で、もう既に分かってることだったら、当てながら答えてもらったりとか。

中原 ちゃんと読んできます? みんな。

入江 いや分からないですけどね。でもテストの感じ見てたら、読んでる子はもうびっちり読んでますね。

中原 本当に。

入江 うん。

中原 さすがですね。

入江 読んでる子はすごい読んでます。

中原 へえ。でも読んでなかったら議論ついていけないですよね。

入江 そうですね。で、読んでない子はテストでもうすぐ分かっちゃうんで、毎回やるんで。そのときに「ちょっとランクだいぶ下や」とか言って、
 「点数、ちょっとやばかったで」って言って。

中原 本当。ちゃんとやってきます? どうですか。

入江 言ったらやってきますね。

中原 そうですか。議論はどうですか。盛り上がりますか。

入江 いやそこが今、ちょっと難しいなと思ってるところで、普段大学院生とかと接してるんで、そのレベルで考えて話ししちゃうんですよね。

中原 先生がね。入江先生がね。

入江 そうです。それはちょっとたまにかみ合わないときがあって、改善の余地ありという感じだなといつも日々、思っていますけど。

中原 分かりますね、でもそういうのって、何が分からないのとか、どこまで分からないのが分からない

入江 そうです。

中原 だったり、こう何に関心があるのかもいまいちこう分からないっていう。僕も大学院生とか社会人は、研究柄というのか、仕事柄よく接するんで、
 何となくその人たちにしゃべるやり方は分かるんですよ。でもやっぱ駒場に行ったり、学部生と話さなきゃなんないっていうときに、
 結構どこまでを前提にして良くて、どこからを問いにしていいかが結構分からないんで

入江 分からないですね。そう、分からないですよね。それで小テストもやっぱり課して、勉強、こっちもさせてもらってる、って感じですよね。

中原 ああ、そうですか。先生は今日あれですよね。東大に来る前は、どちらにいらっしゃったんですか。

入江 理化学研究所、研究所ですね。

中原 理研。

入江 はい。

中原 理研にいらっしゃった。

入江 理研にいました。

中原 そうですか。で、東大に移って1年目ぐらい?

入江 そうです。

中原 1年、どんな1年でした?

入江 ものすごい忙しいっていうのはあったんですけど、でもやっぱり中身充実してて、自分の研究にもやっぱりすごいプラスでしたね。

中原 一般的に研究大学にいると、やっぱ研究大事ですよと。で、一方で教育もありますよ。社会貢献もありますよ。
 いろいろあるんだけど、教育っていうのはどっちかっていうと負荷だよね、と思う人もゼロじゃないなと

入江 重いみたいな?

中原 うん、重いみたいなね。あまり重過ぎるのもどうかなとも思うんだけれども、先生にとって自らのご研究にとったり、教育ってどんなもんですか。

入江 自分のやっぱり研究のプラスになるものですよね。

中原 なぜですかね、それは。

入江 研究所にいたときに感じたのが、やっぱり自分の知識を削りながら研究してるような感じだったんですよ。
 時間はかなり自由に使えて、どんどん自分で勉強進めれるんですけど、やっぱり俯瞰する、例えば専門知識を持ってない学部生に教えるってなると、
 かなりいろんな知識をベースから押さえておかないと話しできないし、俯瞰する作業とあと大きく見るとここが謎ですよ、
 っていう話を自分の中で整理できてないと、なかなか授業ってできないと。そういう授業してると、自分が専門分野の細いところにはまりかかってたのが、
 いったんちょっと引き上げてもらえる感じがあって。

中原 なるほどね。

入江 うん。だからそれが大学の魅力っていうか、教育をしながら研究に役立てるというか、自分の研究の足しになるものですね。

中原 なるほどね。研究って本当すごく細分化されてるから、小さいところでみんな勝負しますよね。
 そういう意味で言うと教えるってなってくるともうちょっと上に、メタに上がらなきゃならないっていうか、俯瞰しなきゃなんないですもんね。

入江 うん。で、なんかやっぱり研究も素朴な疑問のほうが面白いなと思って、なんか「イカってどれぐらい時間たったら地上歩き回るの」とか、
 「そんな可能性はあるの?」とか「ないの?」とか

中原 イカね。

入江 非科学に近いような、あれは無脊椎動物の中でもかなりかしこいほうの動物なんですけど

中原 そうなんですか。

入江 って言われてるんですけど

中原 イカが?

入江 イカが。タコ、イカは。

中原 そうなんですか。

入江 で、やっぱそういう素朴な疑問に、ほとんど非科学に最初は聞こえるんですけど、予測性を持つ科学っていうのも、
 例えば物理学だったら50億年後の宇宙の姿とか平気で議論するわけでしょ。じゃあ自分の分野は何が足りないかとか、
 確かに進化生物学はそういう話で来てないなとか、いろいろ俯瞰の作業になる。

中原 そういうのって意外に、イカはいつになったら歩き始めるんですか的な問いって学部生のほうが得意なんじゃないですか。

入江 学部生のほうがいろいろ、やっぱり話ししますよ。で、自分は専門知識とか専門家の作法にはまっちゃってるときがあるんで、
 やっぱ学部生とかのほうが発想が自由ですよね。

中原 そうですか。

入江 うん。

中原 なるほどね。そうすると時にグサッ、みたいな。

入江 あります。

中原 とんでもないところからパーン、みたいな感じですかね。

入江 なんでこの質問に、疑問に答えれないのか。で、答えれないのはいいにしても、授業で「謎です」って紹介してるんで。
 でも「何が分かればこれが解けるんですか」っていうのに答えれない。例えば万能細胞ってありますけど、
 あれ、見つかってからかなり時間たってるにも関わらず、「なんでそんな3次元の臓器を、試験管の中で心臓作るのがなんでそんな難しいんですか」って言われると、
 「何が分かればいいんですか」って言われると、そこが難しい。

中原 なるほどね。

入江 結構答えが、自分の中で整理されてないとすぐ分からない。グサッてきますよ。

中原 素朴な問いなんだけど、素朴で鋭い問いなんでしょうね。きっとね。

入江 そうですね。

中原 でも多分一般人の感覚には近いんだと思うんですけどね。確かにそういうのは学部生得意かもしれないですね。

入江 「かしこい人いっぱい集まって研究してるはずやのに、なんでできへんの」とか、「何が分からへんの」みたいなふうに言われると、
 そうか、自分の研究でもなんでこれ答えられへんのか

中原 面白いですね。

入江 考えますよね。

中原 ちなみに移ってこられて、1年間だとさっきおっしゃってたんだけど、最初、授業するのって、大変じゃなかったですか。
 本当ゼロからやってかなきゃならないわけでしょ。

入江 そうです、そうです。

中原 何に苦労なさいました?

入江 何に苦労したか。やっぱり授業を受ける学部生の知識がどれぐらいあるのか。それがつかみ切れて、今もちょっと四苦八苦して、
 いろいろ試行錯誤してますけど、そこがちょっと難しいところですよね。

中原 でしょうね。組み立てみたいなものは? 例えば90分しゃべくりまくるとかって、そういう授業なさってないと思うけど、
 どのぐらい詰め込んだら90分になるかとか、あんまり分かんない・・・。

入江 分からないですよ。だから普段、たまに「何々の特別の授業をしてください」っていって、他大学へ行ったりとか、
 そういうのは前々から少しずつはあったんですけど、90分をシリーズとしていくつも組んで、全体を教えるにはどうしたらいいかってなると、迷いますよね。

中原 迷いますよね。

入江 うん。

中原 うん。分かるな、その感情。

入江 うん、迷いますね。

中原 去年、いいや、駒場に行って授業したんです。1、2年生向けの。そうすると院生で扱う1時間で、1講義目分で扱う授業の3分の1ぐらいにして細かく、
 何ていうのかな。かみ砕いてやらないと伝わらないんですよね。で、どのぐらいの分量を持ってけばいいのかが分かんなかったりしてて、
 なんかこう新任のときみたいに思ったんだけど、いや分かんないよね、対象者変わっちゃえば、って思うんですよね。

入江 多過ぎたり、そんで議論を簡単に、簡単にかみ砕き過ぎると「中身がないと思います」とか

中原 それ嫌だね。

入江 でもそういうのもらえたほうが、ああそうか、これは歯ごたえないと感じるのかとか、フィードバックはもらえたほうが

中原 結構フィードバックきついやつもいるしね。

入江 で、何ていうんですか、真面目にきついこと言う子って、成績上位者ばっかりだったりとかして

中原 そうなんだ。

入江 いつの間にか下ほったらかしにしてるとか

中原 分かります。

入江 全体のこと考えてなかったとか、マニア向けの授業になってたとか

中原 分かります。だからその場合ってどこに合わせていいか、レベルを合わせていいかがまた悩むわけですよね。

入江 悩ましいですね。

中原 トップに合わせるのか、それともミドルに合わせるのかとかね。この番組っていうかこのプログラムって、
 近い将来大学の教壇に立つ院生たちも結構見てるんですけど、先生のほうからなんか一言、最後にメッセージを頂けるんだとしたらどんなものありますかね。

入江 これは自分の尊敬する先生、研究者の人が言ってたのが、やっぱり大学の先生は確かに忙しいんですけど、忙しい、忙しいで教育のDuty、Dutyってちょっと言い過ぎやなと。
 やっぱそこから得られてる面白い部分とか、研究に役立ってる部分いっぱいあるんで、やってみたらすごい楽しいっていうか、そんなに重くないし、
 楽しかったっていうのは1年目、2年目のメッセージですけど。

中原 じゃあまた変わるかもしれないね。

入江 いや、このままいきたいですけどね。でもその先生はかなり上の先生で、ずっとそういう感じなんで、楽しいよと。

中原 確かになんかDuty自慢みたいなね。

入江 ありますよね。

中原 そんなことしててもしゃあないっていうのもあるから

入江 やっぱり自分の学派というか、「こういう考えのやつを育てたい」って言って、そこの大学の出身者はやっぱりその分野に強いとか、
 学問分野育てることにもなるんで、そういうやりがいがあるってその先生言って

中原 それは正しいですよね。

入江 それはそうですね。

中原 やっぱりすべてとは言わないけど、次の時代の学問を考えてる先生は、教育にやっぱちゃんとCommitしてるなって、すごく僕も思いますね。

入江 研究にもプラス、やっぱりありますよね。そういう意味では。

中原 そうですね。

(音楽)

中原 さて、これで終わりなんですけれども、今日はどうもありがとうございました。先生、ありがとうございました。

(音楽)

(了)

    pagetop