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ストーリー9.大学教育と大学生の日独比較

(音楽)

中原 はい、皆さんこんにちは。東京大学の中原です。きょうは総合文化研究科、東京大学総合文化研究科のヘルマン・ゴチェフスキ先生にお越しいただきました。お忙しいところありがとうございます。

ゴチェフスキ はい、こんにちは。ヘルマン・ゴチェフスキです。

中原 ゴチェフスキ先生は専門分野って言われると何ていう分野になるんですか。

ゴチェフスキ 年ごと、だんだん分からなくなってきますね。簡単に言うと音楽学です。

中原 音楽。

ゴチェフスキ 音楽学です。

中原 大学、先生、教授資格を取られてから、教壇に立たれたと思うんですけど、そのときに教えていられて、駆け出しの先生として教えられて、印象深かったことってありますか。なんかこう若い頃の経験で。

ゴチェフスキ ちょっと一つ目、経験を話したいんですけれども、日本ではあり得ない経験なんですけども、教授資格を持つと初めて講義できるんですね。その前にはドイツのアシスタントというのは、講義じゃなくてゼミ形式の授業はたくさん持つことができるんですけど、講義をするというのは基本的に教授資格を持った人ですね。ただしドイツの大学では講義は単位にならない。

中原 単位にならない。

ゴチェフスキ うん。単位にならない。

中原 それじゃあ行かなくていいってことですか。

ゴチェフスキ うん?

中原 自分が

ゴチェフスキ 行かなくてもいいです。

中原 興味がなかったら行かなくていい?

ゴチェフスキ 興味がなかったら行かなくていいです。だから行っても何ももらえないんですね。出席も誰も取らないし、それで試験もないし、ただその授業を聞くだけですよね。

中原 聞きたい人が、じゃあ行くってことですね。

ゴチェフスキ 聞きたい人しか来ないですね。

中原 来ない。

ゴチェフスキ 私の、やはりすごく大変な経験は、私は一番最初に講義をやったときに、最後に学生は1人しか残らなかった。

中原 え、それはなんでですか。

ゴチェフスキ だから私の言ってることに、みんな、最初はみんな来たんだけども、最初は多分30人、40人居たと思うんですけれども、でもやはりみんな、この先生が教えてるの、面白くないと・・・。

中原 どぅえー、すごいですね。

ゴチェフスキ すごく大変でした。

中原 究極の授業評価ですね。

ゴチェフスキ そうなんですよ。だから学生は成績が付かないんだけども、先生は成績が付くんですね。

中原 それは興味深いですね。逆ですもんね、だって普通ね。

ゴチェフスキ そう。

中原 そうですか。

ゴチェフスキ やはり講義はだいぶ頑張らないと学生は興味を持ってくれないということはよく分かりました。

中原 じゃあだんだん、先生あれですか。こう残ってく人数とか多くなってきました?

ゴチェフスキ まあだんだん、ちょっとずつですね。

中原 何が例えば一番最初にやったときと、その次とか、その次にやったときに違ったんでしょう。逆に言うと何が分からなかったんでしょうか。

ゴチェフスキ 多分一番最初に、私は基本的にいつもそうするんだけども、私は研究中のテーマについて講義をするんですね。それはやはり自分が研究したいから、講義をすると来週何かを教えないといけないので、研究しないといけない。

中原 すごいな

ゴチェフスキ 研究する動機が出てくるんですね。今でもそうやるんですけれども、やはり一番最初にはちょっとそこで自分の能力を、どういうのかな。もっと自分が短い期間でたくさん研究して、面白いこと言えると思って、実は追いつかなかったんですね。だから結構毎回、どのように授業の時間は話、内容が集まるかって毎回悩んで

中原 すごいな

ゴチェフスキ 結局面白くないことをたくさん話したと思います。

中原 そうすると研究ができないと授業もできなくなっちゃうんですか。

ゴチェフスキ そうなんですね。

中原 すごいシステムですね。

ゴチェフスキ もちろんずっと研究してきたことについて、いつも同じ講義をやることもできるんだけども、そういう講義は学生にはかえって人気があるんですね。だから私は学生として非常にびっくりしたのは、ちょっと年寄りの先生が居たんだけど、その人は25年前から、その人が教授資格を持った25年前からずっと同じ授業を出してたんですね。

中原 鉄板ネタ

ゴチェフスキ うん。それで音楽の例を、音楽を鳴らすために全部25年前の音源でしたね。やはり25年間には研究がだいぶ進んできてたんだけれども、それは全然関係なしで、いつも同じ授業しかやってなかったんですね。

中原 先生はあれですよね。そういう意味で言うと、一つとして同じ授業はなくなりますよね。

ゴチェフスキ そうです。私は2度同じ授業をやったことは、今までないんですね。でも、だからその先生はとても人気があったんですね。だから一番最初に、やはり若い研究者としては非常に頑張って、授業の工夫して、それは内容はそれなりに面白かったんですね。学生としては楽ですね。

中原 僕も授業を一回も繰り返したことがないので、すごく共感できます。

(無音)

ゴチェフスキ 一番最初にびっくりしたのは、講義をやって試験をやらないといけないんですね。あれは毎回嫌なんですね。

中原 日本の大学に移られて、一番びっくりしたのが

ゴチェフスキ うん。ドイツで講義をやったときに、試験に質問できるような内容あるかどうか考えたことがなかったんだけれども、今まで私がやってた講義の中で、実は試験になるような内容は全然なかったんですね。結局試験でも何とか試験できる内容で講義をやるのが、今でも僕は全然良くないと思うんですけど、どうしてもやらないといけないんですね。学生が単位もらわないといけないので。特に教養学部では単位はまた成績が重要ですね。やはり優秀な学生、区別しないと学生がかわいそうですね。だからみんなに優あげるというのは禁じられてるし。

中原 そうですね。

ゴチェフスキ それで、ただそれは本当に大学の授業としては本当はとても間違ったことだと思うんだけど、でも日本の大学も面白いことはたくさんありますね。

中原 先生はドイツご出身ということで、日本の学生とか、日本の大学の先生とかっていうのは、先生の目から見てどういうふうに見えるのかって、次に伺いたいんですが、それはドイツと日本と対照付けても構わないですし、先生の目から見て日本の学生っていかがですか。

ゴチェフスキ 私は駒場で、教養学部で教えていて、大学院でも教えてるんだけども、私のやっている6割、7割の授業が1、2年生向けの授業ですね。それでそこでまず学生が若いですね。

中原 若い。

ゴチェフスキ 若い。日本人の学生は本当に未成年で入ってくるんですね、大学に。

中原 そうですよね。18歳で、ストレートだと入ってきますよね。ドイツだと違いますか。

ゴチェフスキ ドイツだと18歳で成年にはなるんですけども、大学には入ってこないですね。ドイツは大体高校もちょっと長くかかるんですね。高校卒業するのは大体19歳か20歳ぐらいが多いんですけれども、その後でまず、例えば語学研修とかで1年ぐらい他に行くとか、そういう人が多くて、実際に大学に入るのは多くの学生が22歳、23歳とかが多いですね。より後で入ってくる学生も居ますね。

中原 そうすると23歳、24歳になって大学に入ってくるっていうのと、18歳で入ってくるって全然違ってて、18歳のほうが多分経験もないだけに、いろいろケアを必要とするでしょうね。

ゴチェフスキ そうですね。だからまず入ってくる学生は、日本では一番目的としてるかどうか分からない、一番期待してるのは何か学べるということですね。私は学部生に教えてるときには、まず大学は何かを学ぶ所ではないということを最初に言うんですね。それは高校までは何かを学ぶ所でしょうけれども、でも大学では学び方を勉強するということですね。ですから例えばこの前、音楽史の授業、大学、学部向けでやったんですけれども、そこで一番最初に教えたのは音楽史が存在して、それを学ぶことができるというのは間違った考え方で、私たち学者たちは音楽史を作っているということです。それでそれは人によって作られてる音楽史が全然違っていて、それで学生として学ばないといけないのは、そういう知識は作った人が居るということで、その作った人はどのように作ったかということに興味を持つのが授業、重要だということですね。

中原 そしていつかは自分も音楽史の作り手になるってことですよね。

ゴチェフスキ そうですね。そう。だからやはり大学では、学ぶ目的というのはその音楽史の作り方を学ぶということですね。例えば知識を得るために、例えば重要な作曲家がどういう作品を作って、それはいつ作ったとか、今全部、Googleで調べたらすぐ分かるので、大学の授業を受ける必要はないです。

中原 Google、ググれば分かっちゃう。

ゴチェフスキ だからそれは大学の授業でやらなくてもいいんですね。基本的には。

中原 なるほどね。

ゴチェフスキ なぜ、ただその中に、なぜこの作曲家が重要なのかということを考えたら、まず音楽史の中にこの人が出てきて、この人が出てこない。どういう基準で誰かがそれを決めたかって、そういうことを考えるのが大学ですね。

中原 そうですね。日本に来られてから、もう11年っていうことで、その間にいろんな授業をなさったと思うんですけれども、先生はなんかこうアジアの学生と、東大の学生と交流しながらやるような授業をなさってるって聞いたんですけども

ゴチェフスキ そうですね。

中原 それはちょっとどんな授業なのか教えていただけますか。

ゴチェフスキ 実際に学生交流やるようになったのは3年前から日韓交流ということでやったんだけども、去年はちょっとなんか不幸な出来事があって失敗して、それでやはり一つの大学だけとやると、ちょっと小さいことがうまくいかないと問題が出ると分かって、今回は韓国の二つの大学、ソウル大学とヨンセ大学と、実は台湾国立大学、国立台湾大学でしたっけ。それで香港大学にも話をかけてたんですけど、結果的に韓国の二つの大学と別の大学も1人、それで台湾の大学から学生が来るようになったんだけども、香港は今回は参加者が居ないということで、台湾と韓国と日本で今回は交流することになってます。

中原 それは交流もあるんですけど、どんなテーマで例えばディスカッションしたり、やり取りをするんですか。

ゴチェフスキ それは毎回テーマ、それぞれテーマを考えるんですけれども、まず大学院生、私の所もそれほど多くは居ないし、それでソウル大学の先生の所もそれほど多くの大学院生が居ないし、できるだけ多くの学生が何とか参加できるようなテーマを見付けてやるんですね。例えば今回、今年は私はリスニングというテーマを出してて、リスニングというのは音楽の、音楽文化の中の重要な行動の一つなんだけども、例えば家で自分、スピーカーからリスニングする人も居るし、演奏会に行ってリスニングする人も居るし、どっかに、森に行って鳥の声をリスニングする人も居るし、リスニングする音楽はクラッシック音楽であったりして、あるいはポップス音楽であったりして、あるいは伝統音楽であったりして、あるいは音楽ではなくて面白い音だったりして、そこでリスニングは歴史的にも文化的にもどのように変わってくるとか、またそういうことをいろんな面から

中原 ディスカッション

ゴチェフスキ ディスカッション

中原 言語は英語ですか。

ゴチェフスキ 仕方なく英語ですね。やはり共通の言語は英語しかないですね。

中原 どうですか、日本人の学生は元気に発言してますか。

ゴチェフスキ 準備が必要ですね。それは私はこの授業は大体1年間ぐらいの準備期間があるんですけれども、一番最初はみんなアブストラクトを出すんですね。だから参加するためにまず自分の研究テーマについて、私からテーマを提案して、それをアブストラクト出していて、そこで優秀なアブストラクトしか受け入れないんですね。学生を選ぶんですね。次のステップはちょうど今、このステップなんだけども、メーリングリストを作って、そのメーリングリストによってみんなで連絡取れるようにして、それでまずお互いに自己紹介を、メールを取って自己紹介をするということで、次のステップは今月末にみんな、そのアブストラクトをもう一回書き直して、みんなで

中原 シェアして?

ゴチェフスキ シェアして、お互いのアブストラクトを読んで、それで今今回の参加者は全部で17人になるんですけども、その17人を四つのグループに分けて、そのグループはだから4人か5人の学生が居るんですけども、それぞれのグループには必ず台湾の人と、韓国の人と日本の人が居るんですけれども、それでそのグループの中では結構近いテーマをやってる学生が居るんですね。例えばアバンギャード音楽についてやってる学生たちは一つのグループ作って、あるいはアジアの伝統音楽やってる人が一つのグループ作ってとか、そういうふうにグループ分けするんですけれども、それでまずそのグループで集中的にディスカッションすることにします。そのゼミが始まる1カ月前にみんなにフルペーパーを英語で出してもらいます。それはかなりきつい文字数の制限を付けてるんですけど、それはなぜかというと、やはりみんなにみんなのペーパーを読んでほしいですね。ですから1カ月ぐらい読む時間があって、それは基本的には全ての、他の16人の学生が書いたペーパーを全部読むというのが条件なんですけども、そこでまた集中的にグループの中の原稿を読んで、そういう原稿に対して質問する義務があるんですね。それは自分のグループに入ってる人には必ず質問をするということ、二つか三つぐらい質問を考えてもらうということになります。それで実際にみんな東京に来たときに、一番最初にまた自己紹介のセクションのやるんですけれども、その後でまずグループで開講後のセッションと、1回午前のセッションのやって、その中で4人か5人だけで自分の発表について、予定してる発表についてディスカッションしてもらうということです。最終的に皆さんが45分ずつもらって発表してそれでみんなで、17人と先生たちも部分的に付いていて、だから17人と先生一緒に、一つのペーパーずつちゃんとディスカッションするというパターンですね。

中原 なるほど。

ゴチェフスキ もちろん懇親会とかもたくさん作って、だからその間、1週間やったらもうみんなペラペラ英語しゃべりますよ。

中原 それやった学生からはどんなこう、交流学習に参加した学生からはどんな感想とかって聞かれます?

ゴチェフスキ ぜひまた参加したいと。

中原 そうですか。

ゴチェフスキ だから今4人、4回目という人も居ますね。

中原 そうですか。じゃあリピーターが出てくるほどですね。

ゴチェフスキ そうですね。

中原 高いってことですね。最後にちょっと、お時間もそろそろなんで伺いたいんですが、今近い将来大学教員になりたいっていう、大学院生がこれを見てるんですけれども、若い学生、大学院生たちに先生がもし一言エールを送られるんだとしたら、なんかございますか。メッセージというか。

ゴチェフスキ 多分自分が本当に興味があることをやってくださいと。それはもちろん他の人も興味持ってくれるかということもいつも考えないといけないんだけれども、でもやはり自分が本当に興味を持たないと、結局人も興味を持たないと思うので、なんかこういうことをやると雇われるかもしれないと思っただけで、そういう方向でいくのはやはり

中原 邪道だと。

ゴチェフスキ そう。それで本当に自分が興味を持ってることがなければ、大学の教員になるという希望がもしかすると間違っているかもしれないですね。

中原 じゃあちょっとお時間もあれなんで、これで終わりたいと思います。どうもありがとうございました。

ゴチェフスキ ありがとうございました。

(音楽)

(了)

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