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ストーリー6.プロジェクト・ベースド・ラーニングからパッション・ベースド・ラーニングへ

(音楽)

中原 はい、こんにちは。東京大学の中原です。きょうは同志社女子大学の上田信行先生にお越しいただきまして、学生を巻き込んでいって、プロジェクト型の学習、あるいはプロジェクト型の授業みたいなものをどういうふうに作っていけばいいのか。そういうお話を少し2人でトークセッションしていきたいなというふうに思います。上田先生、どうもきょうはよろしくお願いします。

上田 こちらこそよろしくお願いします。

中原 最近大学だといわゆるProject Based Learningとか、Service Learningだとか、実際に地域に出ていったり、あるいは企業とかと連携したりして、一緒にプロジェクトをやっていって、その中でいろんな知恵を学ぶみたいなことっていうの、最近よく取り組まれてると思うんですけれども、上田先生はそういうので同志社女子大学のほうで実践なさってると思うんですね。で、ちょっとそういう辺りについて伺いたいんですが、先生はまず学生が主体的にというのか、やる気持ちってプロジェクトに取り組んでいくような場を、どういうふうに作られてるんですか。

上田 そうですね。僕はパッションということをすごく大事にしてるんですよ。何かに向かって一生懸命やるっていうか、僕はプレイフル・ラーニングということを一つのキーワードにしてるんですけど、それはやっぱり真剣に何かに情熱を持って取り組むという、それが楽しくて仕方がないという、そういう意味で使ってるんですね。

中原 なるほど。それはプロジェクトに真剣に取り組んでる。しかもプレイフルに取り組んでいくっていうことなんでしょうか。

上田 そういうことです。なかなか今まで大学の授業っていうのは、何か概念とか教えて、頭では分かってるんですけど、やっぱり経験してないので、頭では情熱大事っていっても、それは実際に情熱的に動けるかどうかっていうのは、だいぶ距離が実はあるんですね。だから・・・。

中原 それは頭で学問的な知識が分かっていても、実際に例えば何かやろうとしたときに、それがうまくできないってことなんですか。

上田 そうですね。情熱が大事だとみんな大学で習っても、実際に情熱を持ってやれるかっていうことは、だいぶちょっと距離があるので、僕はもう最初から、やっぱり経験をしてもらって、よく経験から学ぶっていうことはあるんですが、実は経験をして、その経験についてよくグループでディスカッションさせるんですね。だからその経験について考えることで初めて学びって成立すると思うので、これから多分プロジェクト型の授業をやられる先生方はやっぱり体験させればいいっていうことではなくて、その体験をどう意味付けていくかっていうことをグループで思いっきりディスカッションさせて、だからそれが大学の授業とか、あるいはもうちょっとその背後にある教育学のセオリーなんかとつながっていくっていう、そこが面白いと思うんですね。

中原 そうすると、パッションを持てるような課題とかプロジェクトを設定していって、そこで学生さんに取り組んでもらうと。で、その上で終わった後とかにちょっと振り返りっていうのは・・・。

上田 そうですね。

中原 今の経験ってどういう意味だったんじゃ、みたいなことを意味付けるプロセスがあって、で、それがもう例えば理論とか概念とか、そういう大学ならではのものとつながりを持っていくっていうこと、印象ですか、大体。

上田 そうですね。そこが例えば教育学とか、あるいは学習環境をデザインするとかで学んでる学生さんたちにとっては、単なるイベントができればいいとか、そういうふうにみんな思ってるんですけど、一番大事なのは抽象化する能力、つまりモデル化すると。今回イベントして、こういうことやって、こういうことやってっていう、それはアクティビティとか活動の順序っていいますか、ありますけれども、それは実際には、じゃあその活動はどういう構造になってるんだろうかとか、なぜそういう構造を使ってるのかっていうことを、それがどういう学びと深い結び付きがあるかっていうことを、学生さんたちが可視化したりとか、ですから活動をたくさんやってもあまり意味がなくて、活動からモデル化して、抽象化するとモデル化できますよね。今度はそれを使って、応用問題として全然違うものをやる。それができると社会に行ったときにどんな分野でも役に立つと思うんですね。

中原 よくプロジェクトベースの学習とか、あとそういうService Learningでもいいですけど、そういった学習って経験、経験、経験みたいなね

上田 数をこなしたらいいみたいな

中原 数をこなせと、取りあえず現場出ろという感じになっちゃいますけれども、そうじゃなくてやっぱりそれをいかに経験したものをモデル化してったり、抽象化してったりするってことが大事ということですよね。

上田 そうですね。それが多分今までの大学での授業とちょっと違う所で、今までは最初に理論を教えたり、モデルを教えたりして、それから応用問題やっていこうなみたいなことがあったけど、実際にまずプールっていうか、水の中に飛び込んで、アップ、アップしながらいっぱい失敗とかしながら、それに自分で意味付けていくと。で、その自分で意味付けていくだけだったらやっぱりある偏りがあるので、もうちょっと広い世界の、今の例えば先端の教育学の考え方どうだろうかとか、そういうことに結び付けていくことによって、そこが実は大学の授業として一番面白いとこなんですね。

中原 そうですね。
 先生さっきパッションを持つ、学生がパッションを持てるようなテーマ設定とかプロジェクトがいいっておっしゃってたんですけども、学生も一様じゃないですよね。実際すごいパッションを持ってる学生から、取りあえず単位取っときゃいいや、っていう人も居ないわけではない。そうするときに、例えば「何か一緒にやってこうよ」って言っても、差が生まれますよね。

上田 温度差があったりね。

中原 そういうのって結構悩まれてる方とかって多いんじゃないかなと思うんです。

上田 そうです。実はそういうとこに一番僕たち、特に大学生を対象にする場合、それが一番大きな悩みなんですね。社会人の方っていうのは、もうやりたいことっていうか、何のために今ここに来てワークショップに参加してるとか、このプロジェクトやりたいっていうの分かっておるんですけど、学生はまだそれがどういう意味があるのかと、単に大学の課題だと思ってたりとか、それはやっぱりすごく自分の本当に今悩んでる問題としてなかなか捉えにくいんですよね。それはやっぱりやっていく中でしか駄目だと思うんですね。とにかく最初はちょっと嫌だなと、意味が分かんないなと思ってても、とにかくやると絶対何かあるんですよ。だから「まずは現場に来なさい」って言って、で、最初は嫌でも行くと。

中原 嫌でも行く。

上田 で、それをやっぱりその中でどこが嫌だとか、それで行ってみたら結構面白かったとか、例えば実はきょうもプロジェクト、この東京でやってるんですけど、やっぱりそのプロジェクトに行くまで、結構やっぱり大変なんですよね。だけど

中原 いろんな葛藤生まれますよね。

上田 そうなんです。それがもう本当に、プロジェクト学習のときは本当、もう崩壊する寸前までいくって、本当にあるんですよ。それはやっぱり教師としては一番つらいとこなんですけども、だけどそれを何とか乗り越えていくと。で、そのとき乗り越えるやっぱり力っていうか、ドライブになるのが、やっぱり何のためにやるかとか、価値観ですよね。だからやることに意味があると学生が思った瞬間、みんなモチベーション上がるんですよ。だから性格的にモチベーションが低いとか高いとかそういうのはなくて、ただその学生が今回のプロジェクトに対して自分としてどういう意味付けをできてるか。だからその差だけなので、「最初はあんまり分からなくてもやってごらん」と。

中原 取りあえず最初は

上田 そう。

中原 連れてく。

上田 そう。で、とにかくやってみる。で、そしてそこで感じたことをちゃんとみんなで受け止めてやっていくと、だから僕はJoint Attentionって言ってるんですけど、横で、例えば15人ぐらいのプロジェクトで、横を向いてやるとけんかになる可能性があるんだけども、共同注視するっていうか、このプロジェクトをみんなで見ると。そうすると前を向いてるからあんまり横気にならないんです。

中原 横を見てるとあいつなんか持ってるんちゃうかと

上田 そっちばっかり気になって、自分は頑張ってるのに、バイトも辞めて頑張ってるのに、こっちの人はバイト行ってるとか、例えばそんなことがあるので、そこに向けたら駄目で、で、プロジェクトに向けて全員が見ると。それに対して全員でそこの意味を考えていくと。そうするとこういう感じで参考関係というか、ここにプロジェクトがあって、自分があって他者があると。この三つの関係でやっていくと、結構うまくいく。だからそういういろんな問題が起こったときに「もう一回みんなで課題をちゃんと見ようぜ」って言って

中原 そうするとJoint Attentionできるような何か課題の設定だったり、目標っていうのが大事なわけですね。

上田 そうですね。僕の場合特に意識してるのはステージなんですよ。

中原 ステージ?

上田 うん、ステージ。やっぱり人間ってステージで

中原 ステージは舞台とか

上田 舞台ですね。

中原 人に見られる機会っていう意味ですか。

上田 そうです。例えば音楽の人でもそうじゃないですか。ピアノのリサイタルっていうのは最初ちっちゃな所でやって、だんだんもう世界コンクール行くとか、それからいろいろ音楽の世界でも、最初はストリートから始まって、もう最後は東京ドームとか。だからそういうふうにしてステージを自分で設定して、最初は人が用意してくれたステージに乗っかるんだけど、今度は自分でステージを、なんかこういうことさせてください、こういうことさせてください。ステージをどんどん上げていくことによって、オーディエンスが多様になってきますよね。そうするとやっぱり多様な人と会うとか、それから特に大学生の中でも、もう大学の中で閉じた所でプロジェクトやってもあんまり面白くなくて、いろいろ外に出ていって、やっぱりアウェーで勝負して、それでそれがいろんな人、例えばオーディエンスも例えばきょうはなんかビジネスマンのオーディエンス、きょうはなんか女性のリーダーシップのオーディエンスとか、そのオーディエンスに合わせてこの人たちのためにどんなことができるかって考えると、モチベーション上がってくると思うんですよ。

中原 なるほどね。そういう意味で言うと人に見られたり、人に出会えるような機会とか、場とか、ステージがすごく大事かもしれませんね。それは確かに、そういうステージがあるからこそ本気になると思うんですね。

上田 そうなんです。なかなか気持ちだけで、学校の自分の教室で、「きょうは本番で、本気になって」って言ってもなかなかなれないんですよ。お客さんが居ると

中原 言葉じゃ動かない。

上田 動かない。

中原 ステージが人を動かすと。

上田 そうなんです。

中原 それは確かに言えますね。

上田 それはもう他の世界見てると全部そうでしょ。

中原 まさにそうですね。

上田 まさに音楽の世界から始まって、もうすべてのものが。僕はラーニングっていうのをちょっと三つぐらいの風景に分けてるんですけど、ラーニング1.0っていうのは学校型の学びで、誰か先生が居て学ぶっていう。で、ラーニング2.0っていうのはどちらかというとアトリエとか工房型で、今ちょっとはやりのワークショップとかプロジェクト型の学習もそうなんですけど、みんなでものを作ったりして、なんか共同でやっている。で、ラーニング3.0は実はラーニングするラブって言ってるんですけど、ちょっとラブって禁じ手であまり使うと

中原 言っちゃってますね

上田 すべてがラブだからって。これはラーニングするパフォーマンスとも言ってもいいと思うんですね。つまりオーディエンスに喜んでもらおうと。

中原 もらう、誰かを喜ばせるね。

上田 そう。で、中原さんも経験あると思うんですけど、自分で英語の勉強しようと思ったらなかなかモチベーションが付いていかないけど

中原 わかないね。

上田 だけど何かのためにとか、例えば自分が英語でどうしてもあの人たちのためにプレゼンしなきゃいけないとなると、頑張れるじゃないですか。

中原 なるほどね。

上田 人間ってやっぱり自分のためってなかなか生まれなくて、誰かのために何かすると。で、それが喜んでもらいたい。今度は喜んでもらうと感謝されますよね。

中原 そうですね。

上田 喜びの循環モデルって言ってるんですけど、だからどんどんやって喜んでもらえると、次はもっと頑張って、もっと感謝して

中原 いけますね。

上田 してもらいたいなとか。で、だからそういうことって人間がいつも知らずに持ってることですから、それをうまくプロジェクトとかに組み込んでいくという。

中原 そうですね。昨日自分の同期の、同期っていうか学部時代の同期で、今学芸大で先生やってる高尾隆くんというのが居るんですけど

上田 即興演劇とかやってる

中原 即興演劇の、演劇の先生なんですけど、すごいいいことというか、おこがましいけれどもおっしゃってて、自分のために何かを生み出そうとすると、クリエーティビティーってなかなか発揮されないんだけど、誰かを喜ばせるとか、誰かのために何かを作ろうっていうふうになると、自然といいアイデアって生まれてくるって。

上田 そうおっしゃってましたか。

中原 うん。

上田 いや、うれしいな。

中原 そのテーマがGive Your Partner A Good Time。だからクリエーティビティー―発揮したり、何か新しいものを生み出そう、あるいは学ぼうっていうときって、そのGive Your Partner A Good Timeの発想って大きいですよね。

上田 大きいですね。いやそれがすごく自然なことだし、それってなんかすてきなことなんですよね。

中原 そうですね。

上田 なんかね。なんかやっぱり僕らもなんかやってても、「きょうの先生の話、なんか良かったわ」って言われると、なんかうれしいですし、やっぱり高尾さんがおっしゃったように、Good Timeでしたっけね。

中原 うん。

上田 そういうすてきな時間をやっぱり提供できて、喜んでもらえるのが一番うれしいですよね。

中原 お時間もあれなんですけども、先生、これ見てらっしゃる方はこれから大学の教壇に立ちたいっていう大学院生の方もいらっしゃるし、それがメインなんですけども、そういう方々に対して、先生のほうから何か一言メッセージっていうのあるとしたら、何かありますか。

上田 そうですね。まず自分が楽しんでほしいと思うんですね。このプロジェクトは面白いから、一緒にやってみないか、っていうような、やっぱり学生に向けて自分が面白いと思うことを、僕たちもそうじゃないですか。なんかおいしいもの食べたら、「絶対あそこに食べに行こうよ」って本気で言ってますよね。

中原 そうですね。

上田 だから先生もやっぱり本気で、どうにかやってみようと。で、そういう気持ちを持っていって、先生がやっぱり、先生自身がやっぱりパワーを持つというか、なかなか先生も、なかなか一人っきりじゃパワー持てないけど、一緒になっていくとそういう中でやっぱり自分がこう、ある意味で引っ張っていくリーダーっていうよりも、なんかこう挑発したり、触発したりで、「面白いぞ」って言う。だから先生自身が喜んでいるっていう所に学生を巻き込んでいくという、そういうことがとても大事だと思いますし、僕はもっと憧れって持ってもいいかなと思うんですね。つまりよく言うんですけども、何かやりたいとすれば、その憧れの人が居る所に近寄りなさいと。その場に行きなさいと。で、そこに行くと何か、自分の憧れに手が届くっていう。で、そういうことってすごく大事だと思うんですけど、昔はもちろん古典芸能でも全部師匠の所に泊まり込んでやったりする。そういうモデルっていうのはやっぱり、すごくやっぱりパワフルだと思うんですね。ですから先生が自分のゼミとか自分の授業が一種の憧れに手が届くような、ようなことを感じてもらえるような場を作る。

中原 作ると。

上田 はい。

中原 なるほど。それは先生自身もパッションを持たなきゃいけないってことですね。

上田 そうです。そういう意味でPassion Based Learningというか

中原 Project Based Learningじゃなくて

上田 ええ。

中原 Passion Based Learning。

上田 実は僕はフィンランド行ったときに、「今ヨーロッパはPBLっていって、もうパッションですよ」って言われて、「やっぱそうですか」って言って。やっぱパッションってやっぱりすごく大事かなと。だからパッションとラブと、プレイフルライフがあれば、プロジェクト学習できます。

中原 というわけで、これで終わりです。どうもありがとうございました。

上田 ありがとうございました。

(音楽)

(了)

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